恋文の技術 森見登美彦
文通ってしたことありますか?
この、手書きで履歴書を書いているだけで文句言われるような腐った社会で、ITなるものに支配されようとしている社会で(自分は棚上げ)、手書きの手紙で文通ってしたことあります?
てかそもそも「手紙」って今の若い子は知っているのか。
昔はですね、紙に文字を書いて(印刷じゃない)、それを伝書鳩という「文通専用鳩」の足にくくりつけてみんな連絡を取り合っていたんですよ。いわば、現在の「電子」の役割を「鳩」が請け負って、そりゃもう世界中の空という空を駆け巡っておりました。
あらすじ
主人公の守田一郎は石川県能登半島のクラゲ研究所に院の研究で滞在しています。初恋の人へ素晴らしき恋文を書くために、京都にいる大学院の友人たち等と「文通武者修行」と称して恋文の技術を磨いていく、超恋愛ドラマティックウルトラキュンキュンストーリーです。嘘です。ただのギャグ小説です。
書簡小説
本著の最後、作者あとがきに書いてあったことかと思いますが、この小説の形態は普通の小説とは違って、主人公が友人等宛に出した手紙の文面だけで物語が進んでいきます。これを書簡小説というらしく、作者は夏目漱石の書簡小説を読んだ時にそれが面白くて書いてみたくなったと仰られていました。片方だけの文面しか僕たちは読むことができないわけですが、なぜか相手の人がどんな文章を書いていたのかというのも頭の中で想像できてしまう不思議な作りになっています。森見さんすごい。
炸裂する森見節
森見登美彦さんの作品を読んだことがある方なら共有できる感情だと思いますけれど、この人の作品ってほとんどすべて「森見節」とでも言いましょうか、独特な書き方がありますよね、あれが今回も遺憾無く発揮されています。個人的に、主人公守田一郎のユーモアセンスが大好きで、こいつと文通したら絶対楽しいなと思いました。こうゆう友達欲しいし、いきなり手紙をよこしてくれる奴ってやっぱりこのご時世大切な存在ですよね。久しぶりに伝書鳩見たいしね。この本の見所は、なんといても書く手紙の文末ですね、宛名と締めの文は必見です。
これまたユニークなキャラクター
ユニークというよりも、「あれ、こいつ四畳半神話大系にも出てたような、、」って感じのおなじみのキャラクターが登場してきます。四畳半と夜は短しのように全く一緒の人が出てくるという訳ではありませんが、でもやっぱりなんか似てる。多分、森見さんが学生の時にこうゆう友人がいたんじゃないかって密かに確信しています。あと、主人公は本当に研究をしているのか、これは甚だ疑問です。文通武者修行とは私たちが想像しているよりも遥かに厳しいのでしょうか、彼は文通に明け暮れて研究をなおざりにしてしまう節があるようです。大学院生の風上にも置けません。
なんだか、一体どんな小説なんだという印象しか与えることができなかったと思いますけれども、なんかクスッとした笑いが欲しいなー、と思いっている方は読むとクスッとした笑いをゲットすることができる本のはずです。
みなさん是非読んでください。
そして僕と文通しましょう。